『仮想通貨の基礎知識』をリリースしました

 

今日はビットコインなどの仕組みを解説した『仮想通貨の基礎知識』についてです.本文は国際貿易投資研究所(ITI)のホームページから入手できます.

川野祐司『仮想通貨の基礎知識』ITI調査研究シリーズ,No.56

 

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ビットコインの名前は聞いたことがあっても,詳しい仕組みはよくわからない,という人向けのペーパーです.ちょっと長いので,ここではさらに短くしてお話しします.

 

現在,2009年にビットコインが誕生してから,次々に新たな仮想通貨が生まれており,今この記事を書いている時点では746通貨が合計1000億ドル分発行されています.このうち,ビットコインは約45%を占めています.

 

ビットコインはブロックチェーンという技術が使われています.ブロックとは,ビットコインの取引を記した台帳とブロックの特徴を記したヘッダーからなっており,このブロックを積み上げていくとブロックチェーンになります(「積み上げる」はイメージです).

 

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ブロックチェーンは,ノードと呼ばれるビットコインの取引に参加している端末(PCなど)に保存されています. 記事の一番初めには,様々なノードが参加している図があります.この中でも,マイニング(採掘)に参加しているノードがブロックチェーンを保存しています.ノードは相互につながっていて,近くのノードとブロックチェーンを比べ合って,常に最新の状態を保つようにしています.攻撃者がいくつかのノードを攻撃しても,他のノードからすぐに最新データを送ってもらえるため,ブロックチェーン(データベースと言い換えることもできます)の安全性は高いといえます.

 

マイナーと呼ばれるノードは,ビットコインの送金依頼であるトランザクション(tx)を集めてブロックを作ります.最近は1ブロックに2000件ほどが含まれています.この情報をハッシュという計算をすることで暗号化しつつ,数を減らしていきます(ハッシュについてはペーパーをダウンロードしてください).2件のトランザクションのペアから1つのハッシュを計算し,2つのハッシュのペアからさらに1つのハッシュを計算し・・・と続けていくと,最終的にハッシュは1つになります.これをマークルルートといいます.不思議なことですが,マークルルートを見るだけで,その下に含まれるすべての取引の存在が証明できます.ここまでの計算は数千回ありますが,マイナーが持っている機器では1秒もかかりません.

その上で,マイナーはナンス探しというパズルを行います.ナンスというのは暗証番号のようなもので,10桁の数字です.またハッシュという計算をしますが,この計算の際に暗証番号を0,1,2,3・・・と試していって,パズルが解けるまで繰り返します.デスクトップPCではパズルを解くのに20万年かかるといわれていますので,パズルを解くための専用機器が必要になります.

ナンス探しの競争は世界中で行われており,約10分に1つの割合で見つかるように難易度が数学的に設定されています.ブロックチェーンのブロックが1つ増えるのに約10分かかるということです.利用者から見ると,送金の処理に10分時間がかかるということになります.なお,支払いが確定するにはブロック6つ分の時間が必要です.

 

ビットコインへの投資をする人が増えていますが,私は短期的な投機はいいとしても,長期的な投資をするべきではないと考えています.ビットコインの運営に関わるグループでは政治的な対立が起きており,ビットコインの分裂も噂されています.デジタルの世界でははやりすたりが早く,ビットコインがいつまでも残り続けるとは限りません.老後の資金のための投資,などは非常に危険です.

 

ビットコインは匿名性が高いといわれることがありますが,それは間違いです.ビットコインでは,送金元や送金先(ビットコインアドレスといいます)が「12cbQLTFMXRnSzktFkuoG3eHoMeFtpTu3S」のような文字列になっているために,当事者が分からないような気がしますが,アドレスの使用履歴は誰でも自由に閲覧できます(それがブロックチェーンのいいところでもあります).アドレスの履歴とオンラインショッピングや仮想通貨取引所などの取引データと突き合わせると,個人が特定できることもあります.ビットコインの匿名性は,仮想通貨の中では低い方だと考えた方がいいでしょう.

 

ビットコインの世界では,マイナーたちが熾烈な競争をしており,ハッシュの計算能力は日々増強されています.この計算能力はビットコインに特化されてはいますが,将来はこの能力を他のブロックチェーンの攻撃に使う可能性があります.最近はブロックチェーンをビジネスに応用しようとする動きがありますが,ブロックチェーンを利用するためには,計算能力の増強を続ける必要があり,継続的な投資が必要です.

 

ペーパーでは,ビットコイン以外の仮想通貨も11紹介しています.ビットコインの機能を強化したもの,匿名性が非常に高いもの,数学の発展に寄与するもの,契約書を付けられるもの,銀行送金を便利にするものなど様々です.仮想通貨は非常にイノベーションの高い分野です.ちなみに,仮想通貨は誰でも新規に創って発行することができます.

 

本日はここまで.