ヨーロッパ旅行とパスポート

今日は,EU(欧州連合)のシェンゲン協定のお話です.後半では,車の運転についてもお話しします.

目次

 

EUの単一市場

EUでは1993年に単一市場が始まり,人・物・資本・サービスが国境を越えて自由に移動できる領域が誕生しました.「物」は域内での自由な貿易,「資本」は企業の域内展開,「サービス」はサービス部門の自由な展開を意味しています.


「人」については,シェンゲン協定という協定のもと,旅行者はパスポートのチェックなしで国境を越えることができるようになりました.
(*注:シェンゲン協定には居住に関する項目もあり,スイスは厳密にはシェンゲン協定の一部だけに参加しています.本記事は旅行の記事であるため,スイスもシェンゲン協定参加国として話を進めます.)

 

シェンゲン協定が無いと,地続きの国境を越えるたびにパスポートのチェックが必要となります.東欧諸国がシェンゲン協定に参加する前に旅行したことがありますが,国境で電車やバスが止まり,全員のチェックが終わるまで出発できません.昔は移動にかなり時間がかかりました.車の場合は,パスポートだけでなく車検証のチェックもありました.シェンゲン協定により移動がスムーズになりましたが,パスポートのスタンプが増えないのはちょっと寂しいです.

 

シェンゲン協定参加国

2023年7月現在,ヨーロッパの26カ国がシェンゲン協定に参加しています.EU加盟国のうち地図の白色の国23カ国(クロアチアは2023年1月にシェンゲン協定に参加しました)に,EFTA(欧州自由貿易連合)に参加しているピンク色の4カ国を足した27カ国がシェンゲン協定参加国です.地図ではピンクの国は3カ国に見えますが,スイスとオーストリアの間にあるリヒテンシュタインが小さくて見えていません.

EU加盟国のうち,アイルランド,ブルガリア,ルーマニア,キプロスはシェンゲン協定に参加していないため,例えば,ドイツからアイルランドに行く際にはパスポートチェックがあります.また,2020年にEUから脱退したイギリスもシェンゲン協定に参加していません.ブルガリアとルーマニアは,近い将来シェンゲン協定に参加することが予想されています.

 

パスポートのチェックはどこで?

飛行機がヨーロッパに近づくと,「最終目的地がシェンゲン協定エリアのお客様はこの空港で入国審査をしてください」というようなアナウンスがあります.はじめてヨーロッパに旅行する人は困ってしまうようです.不親切なアナウンスだと思いますが,細かく説明できないので仕方がないのかもしれません.

例えば,日本→コペンハーゲン(デンマーク)経由→パリ(フランス)と移動する人は,フランスが最終目的地になります.デンマークもフランスもシェンゲン協定参加国ですので,乗り継ぎ地のデンマークで入国審査(パスポートチェック)をします.その後,フランスの空港ではチェックはありません.国内の移動と同じ扱いです.
ロンドンが最終目的地の場合,コペンハーゲンは通過するだけですので,ロンドンで入国審査となります.最終目的地がシェンゲン協定国かどうかを把握している旅行者は少ないはずですので,その都度アテンダントに聞いても問題ないと思います.

出国も同じ要領で,パリから出発する人はコペンハーゲンで出国審査,ロンドンから出発する人はロンドンで出国審査です.コペンハーゲン→パリと進んで,その後にドイツに移動して,ベルリンからコペンハーゲン経由で日本に戻る人は,やはりコペンハーゲンで出国審査になります.

シェンゲン協定内から乗り継ぎで帰国する場合,つまり,ベルリン→コペンハーゲン→日本と進む人は,本来はコペンハーゲンで免税手続きをします.ただし,これだと預け荷物(バゲージ)にお土産を入れられずに不便です.朝10時にベルリンを出発,午後の14時にコペンハーゲンを出発,というように日をまたがない場合は,ベルリンでも免税の手続きができます.

 

直行便の場合はこのような問題はありませんが,乗り継ぎだとチケット代が安くなることが多く,また,直行便がない都市も多いので,役立つ情報ではないかと思います.

 

シェンゲン協定の例外

27カ国が参加しているシェンゲン協定エリアでは,国境を越えるのにパスポートが不要なのですが,例外措置があります.2023年5月~2023年10月または11月まで規制がある国は,ノルウェー,デンマーク,ドイツ,スウェーデン,オーストリア,フランスです.これらの国の多くは2015年以降,例外措置を続けています.表向きの理由は様々ですが,難民の流入を防ぎたいという思惑があります.

イベントに合わせて一時的な停止措置が取られることもあります.欧州委員会のHPで確認できますが,それは面倒ですので,国境を越える際にはパスポートを用意しておくのが無難です.

 

home-affairs.ec.europa.eu

 

ヨーロッパでは車での移動もおススメ

観光旅行の場合,ほとんどのヨーロッパの国で国外運転免許証(いわゆる国際免許)が使えます.警察署などで取得できますので,取得方法は皆さんで検索してみてください.国外運転免許証と一緒に有効な地域のリストをくれることが多いです.ドイツがリストに入っていないのですが,実際にはドイツでも運転できます.

レンタカーの予約はネットででき,日本とだいたい同じです.インセンティブが付いているのか,グレードアップをしつこくおススメしてくる職員もいますが,断っても問題ありません.日本と同じように,保険は必須です.最近はほとんどの車がATです(格安の車はMTもあります.個人的にはMTが好きですが,どんどん減っています).最近はディーゼル車はほとんどありませんが,燃料の種類を窓口で確認しておきましょう.

窓口では,どの国に行く予定か正直に伝えた方がいいです.ヨーロッパでは国によって車検制度が異なるため,予約した車種では通行NGということもあります.

 

イギリス,アイルランド,マルタ,キプロスなどの島国では,日本と同じ左側通行で,車のハンドルは右側にあります.アイスランドとドイツやフランスなどの大陸の国々は日本の逆で右側通行,左側ハンドルです.アクセルやブレーキは日本と同じ配置ですが,ワイパーとウインカーが日本と逆です.私もよく間違えます.

 

 

右側通行の国では,特に初日は,注意して運転しないと,左折後に間違ったレーンに入って逆走する可能性があります(日本と逆なので右折は簡単で左折が難しい).また,ラウンドアバウト(ロータリー交差点)への侵入も日本と逆です.さらに,事前にネットで標識について調べておくことをお勧めします.ヨーロッパでは,「優先」がとても重要です.日本では自分が優先でも相手に譲ってしまうことがありますが,ヨーロッパではそんなことはなく,事故につながる可能性があるので,優先関係の標識はチェック必須です.

 

最近は,多くの国で24時間ライト点灯義務があります.ヘッドライトは点けておくのが無難です.歩行者保護などは日本よりも徹底されています.

ハンドサインやパッシングもよく使われます.街中の信号待ちなどでは,日本と同じように「さっさと行け!」という感じで,負の感情をこめてクラクションを鳴らしてくることがあります.ただ,多くの場合はただ単に「教えてくれている」という感じですので,ムッとする前に何か問題がないか考えてみてください.
よくあるのは,一方通行のミス,ライトを点灯していない,ハイビームで走っている,パーキングランプが付きっぱなしで走っている,間違ったレーンを走っている,などでしょうか.

 

始めはいろいろ戸惑いますが,車は公共交通機関で行きづらいところも簡単に行けます.例えば,北イタリアのドロミティは車が必須です.地方のちょっと静かな町に行くのもヨーロッパの魅力の一つです.

 

kawano-europe-essay.hatenablog.jp

 

本日はここまで.