ドイツの日曜閉店法を巡って

 

今日は,ドイツの閉店法のお話です.ドイツではパン屋や花屋,ガソリンスタンドなどを除いて,多くの店は日曜日(と祝日)は閉店しなければなりません.これを閉店法(Ladenschlussgesetz)といいます.

 

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日曜や祝日は買い物ができないため,買いだめをする必要がありますが…ちょっと肉を買い過ぎでは…? そういえば,この大きさのカートいっぱいに砂糖を買っている人を見たことがあります.

 

さて,ドイツの閉店法は1956年に定められ,2003年に大きな修正,2015年に小さな修正が施されています.連邦(ドイツ全体)の基本ルールは,平日と土曜日は朝6時から夜20時まで(ちなみにパン屋は朝5時半から営業可能),日曜日は閉店,12月24日は朝6時から午後14時までとなっていました.

2006年に州ごとに独自に時間を決めることができたことで,多くの州では平日と土曜日は24時間営業が可能になっています.このシステムを24/6といい,週6日は24時間いつでも店を開けていいということです.平日の例外は,ラインラント=プファルツ州とザクセン州で6時から22時まで,ザールラント州とバイエルン州は6時から20時までとなっています.

土曜日については,メクレンブルク=フォアポメルン州とノルトライン=ヴェストファーレン州では0時から22時,ラインラント=プファルツ州とザクセン州では6時から22時,ザールラント州とバイエルン州では6時から20時,ザクソン=アンハルト州とチューリンゲン州では0時から20時と平日に比べて規制が多くなっています.

日曜日は基本的には閉店にしなければなりませんが,州によっては特別なイベントの日などは開店してもいいことになっています.博物館や観光地は開店してもOKです.

ただし,あくまでもこれらのルールは「店を開けてもいい」ということで,小さな店では平日も18時くらい,土曜日は16時くらいに閉めるところが多いように思います.

 

日曜日に店を開けることで,売り上げの増加が見込めます.若年層など収入の低い人や非キリスト教徒など日曜日に働くことを望んでいる人々もいます.平日と土曜日に働いている人は日曜しか買い物のチャンスがないかもしれません.隣国のオランダでは,自治体によっては日曜日の開店が可能で,オランダとの比較でドイツの閉店法を廃止すべきとの声もあります.

一方で,日曜日はキリスト教徒にとっては安息日です.また,給与が月給で支払われている人々にとっては,日曜に出勤しても給与が増えないかもしれません.労働組合は基本的に日曜の開店に反対しています.

 

観光客にとっては日曜日も店が開いていると助かります.日曜日にドイツに着く場合は,水やお菓子などを空港や駅で入手しておかないと,ホテルの高い水を買わされることになってしまいます.土曜日までに買いだめが必要ですね.なお,ペットボトル,一部の缶・瓶にはプファンド(デポジット,15セントや25セント)が付いていますので,飲み終わった後も捨てないでスーパーなどに返しに行きましょう.

 

◆他のヨーロッパ諸国の状況

ここでは,EuroCommerceのOverview: Legislation regarding shop opening hours in Europe 2017の資料から,ヨーロッパの他の国の状況を転記します.国名:平日,土曜日,日曜日(祝日)の形式で続けます.「なし」は制限なしということで24時間開店可能です.複雑なルールがある国もありますが,その中から1つまたは2つを取り上げます.細かいルールは原典資料で確認してください.

 

オーストリア:6-21,6-18,閉店

ベルギー:6-20,6-20,8-12(食品は6-20)

ブルガリア:なし,なし,なし

クロアチア:なし,なし,なし

キプロス:5-20(夏の場合,水曜は5-15),5-19:30(夏の場合,水曜は5-15),閉店

チェコ:なし,なし,日曜は開店可(祝日は小規模店のみ開店)

デンマーク:なし,なし,日曜は開店可(祝日は閉店)

エストニア:なし,なし,なし(アルコール店は全曜日で規制あり)

フィンランド:なし,なし,なし(アルコール店は全曜日で9-21)

フランス:なし,なし,食品は13-・それ以外は年12日開店可

ドイツ:州によって異なる(本文を参照してください)

ギリシャ:5-21,5-20,閉店

ハンガリー:なし(ブダペストは6-22),なし,小規模店のみ開店可

アイスランド:なし,なし,閉店(モールは10-17)

アイルランド:なし,なし,なし

イタリア:なし,なし,なし

ラトビア:なし,なし,なし

リトアニア:なし,なし,なし

ルクセンブルク:6-20,6-19,6-13

マルタ:4-19(冬以外),4-20(冬以外),開店可

オランダ:6-22,6-22,閉店(州によっては開店可)

ノルウェー:なし,なし,小規模店のみ開店可

ポーランド:なし,なし,日曜は開店可・祝日は閉店

ポルトガル:なし,なし,なし

ルーマニア:なし,なし,日曜は開店可・祝日は閉店

スロバキア:なし,なし,なし

スロベニア:なし,なし,なし

スペイン:月曜から土曜日までで1週間で90時間(カタルーニャ州は75時間,州が決めることができる),マドリード地域は自由に開店可,年に10日(ムルシア州14日,カスティーリャ・ラ・マンチャ州12日,バスク州8日)まで開店可

スウェーデン:なし,なし,なし

イギリス:なし,なし,スコットランドはなし(イングランドとウェールズは小規模店はなし・大規模店は10-18・北アイルランドは小規模店はなし・大規模店は13-18)祝日はすべての地域で原則なし

 

国によっては複雑なルールもあります.これらはあくまでも開店できるということなので,全ての店が開いているわけではありませんので注意が必要です.全体を眺めてみると,日・祝閉店はドイツの周辺が多く,他の地域では土日も制限なく開店できることが分かります.

 

本日はここまで.