『国際金融の教科書』が発売されました

今日は9月25日に発売になったテキストのお話です. 

 

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記事の最後に,第1刷の誤植情報があります.

 

大学には国際金融論という分野がありますが,多くのテキストは金融とマクロ経済との関係に多くのページを割いており,金融市場にフォーカスしたテキストがないと感じていました.それなら自分で書いてしまおうと思い,初学者向けテキストとしてまとめました.

本書を読んで金融市場についての知識をつけるだけでなく,読者の金融投資にも役立つように,より実践的な内容も盛り込んであります.大学1-2年生を念頭に置いていますが,社会人にも広くおススメしたい1冊です.

 

全11章の目次は以下の通りです.

第1章:金融の役割
第2章:株式市場
第3章:債券市場
第4章:外国為替市場
第5章:オルタナティブ市場
第6章:金融派生商品
第7章:フィンテック
第8章:国際金融市場
第9章:金融危機と金融の安定
第10章:金融政策と金融市場
第11章:国際金融投資

 

第1章では,金融の役割や金融機関について紹介しています.銀行,保険会社,投資ファンド,SWF(ソブリンウェルスファンド)などのランキングとともに,どのような業務に携わっているのか概説します.国際収支統計の見方も解説しています.

第2章では,株式とは何か,日本市場を念頭に株式取引に必要な用語などを見ていきます.世界の株式市場の概況ではDJIA(ニューヨークダウ平均)と日経平均の関係も見ていきます.株価の決定に関わる企業の財務諸表を解説し,CAPMやFF4を紹介します.株価指数はベンチマークとして使われますが,その際の注意点も見ていきます.

第3章では,債券とは何かを見た後に,様々な種類の債券を紹介します.グリーンボンドやスクークなど幅広く取り上げています.金利と格付けの関係,イールドカーブの形状など,金利に関する基礎知識が得られます.長短スプレッド,BEI(ブレークイーブンインフレ率),CDS(クレジットデフォルトスワップ)も見ていきます.

第4章では,外国為替市場についての基礎知識を修得し,取引通貨ランキングやSDRのようなバスケット通貨も見ていきます.為替レートと貿易・資本取引,トリレンマや最適通貨圏などマクロ経済との関係も見ていきましょう.

第5章では,不動産,商品(コモディティ),PE(プライベートエクイティ)といったオルタナティブ市場を見ていきます.REITやETFなどを活用して私たちもオルタナティブ市場に投資できるようになってきています.商品はエネルギー,金属,農産物など種類が多いですが,主要な商品の特徴を見ていきます.PEは2010年代に入って成長していますが,LBOやディストレストなどの戦略を見ていきましょう.

第6章は,金融派生商品を見ていきます.先物,スワップ,オプションの基本的な解説をします.金融派生商品では,相対取引と取引所取引で取引の手法が異なります.それぞれ分けて見ていきましょう.金融派生商品の活用方法として,プロテクティブプットや金利キャップを解説します.

第7章は,金融と技術の造語であるフィンテックを取り上げます.フィンテックには送金やインシュテック,レグテックなど様々な分野が含まれます.新しい用語がたくさん生まれていますので簡単におさらいしておきましょう.ビットコイン先物がCME(シカゴマーカンタイル取引所)に上場されており,暗号通貨は金融商品として認知されつつあります.暗号通貨の特徴や問題点をおさらいしましょう.暗号通貨は国際送金に適していますが,銀行を経由した既存の国際送金の仕組みも含めて取り上げます.また,DLT(分散型台帳技術)は金融面での利用価値が高いと考えられており,様々な実証実験が進んでいます.DLTの仕組みも見ていきましょう.

第8章は,国際金融市場の参加者や市場間の関連を見ていきます.これまで登場していなかったヘッジファンドやHFTの戦略や役割も見ていきます.国際金融市場で生じるイベントとして,質への逃避,フラッシュクラッシュを見ていきましょう.

第9章は,20世紀に頻発した通貨危機,21世紀に発生した金融危機を取り上げます.金融のグローバリゼーションが進み,複雑な組成によって生まれた金融商品が取引されるようになり,2008年のリーマンショックは世界の金融市場に大きな影響を及ぼしました.主要な資産クラスの動向を見てみましょう.また,2010年代の国際金融規制の体制や主な政策,特に,バーゼルⅢのステージ1について少し詳しく見ていきましょう.

第10章は,金融政策の基礎知識です.金融政策デザインに基づいて,中央銀行の業務を見ていきましょう.公開市場操作などの主要な政策手段も解説します.発動された金融政策はイールドカーブの形状に影響を与えつつマクロ経済に浸透していきます.さらに,アメリカのような経済的に重要な国の金融政策は世界経済にも波及していきます.その様子も見てみましょう.

第11章は,私たちが金融投資をする際の基礎知識を解説しています.私たちの人生は子供時代,現役時代,退役時代を通過します.アセットマネジメントの基本式に沿って,私たちがどのように各時代で経済活動を行っているのか見ていきます.基本式に時間が入っていることが本書の特徴です.具体的なポートフォリオは,ノルウェーのSWFを参考に見ていきます.インデックスファンドやESG投資などのキーワードも見ていきましょう.

 

 

第1刷には誤植があります.ご迷惑をおかけしますが,訂正をお願いいたします.

38ページ下から3行目:減価償却費とは→減価償却とは
83ページ図表4-4左側:JPY(15.8%)→JPY(10.8%)
99ページ下から9行目:ユーロシステムの会合→ECBの会合
137ページ下から1行目:値上がりする→さらに値下がりする
143ページ下から3行目:図表6-17では→図表6-18では
163ページ図表7-8輸送会社→MM社の矢印:輸出→輸入
165ページ下から3行目:ALM/CFT→AML/CFT
181ページ中の下から2行目:100株買い付ければ→買い付ければ
199ページ図表9-7の4行目:NBNI→NBFI
213ページ上から4行目:上下限を隠す→上下限を画す
230ページ上から3行目:触れている→振れている
241ページ左上から2行目:ALM/CFT→AML/CFT

以上です.

 

本日はここまで.