『欧州グリーンディール戦略の現状と展望』が公開されました

今日は,EUのエネルギーに関するお話です.

 

 

国際貿易投資研究所(ITI)から,レポートが公開されました.以下からダウンロードできます.

『欧州グリーンディール戦略の現状と展望』ITI調査研究シリーズNo.153

 

EUが進めているグリーンディール政策は非常に多岐の内容がありますが,報告書ではエネルギーに関する話題に焦点を絞って様々な論文が展開されています.私も第1章で参加しています.私以外はトップレベルのエコノミストが参加しています.

 

報告書の目次:副題は省略,著者の敬称略

  • 第1章:総論:エネルギーを巡る諸問題:川野祐司(東洋大学)
  • 第2章:脱ロシア依存とEU水素戦略の展開:蓮見雄(立教大学)
  • 第3章:投資不足解消と独自財源を模索するEUの中・長期的な成長戦略:田中晋(日本貿易振興機構)
  • 第4章:ロシアのウクライナ侵攻後のドイツ経済:田中信世(国際貿易投資研究所)
  • 第5章:ドイツ主要自動車メーカーの電動化の進展と中国企業の動き:高塚一(日本貿易振興機構)
  • 第6章:欧州グリーン・ディール産業計画と経済安全保障:田中友義(国際貿易投資研究所)
  • 第7章:イタリアのエネルギーと経済安全保障戦略:田中理(第一生命経済研究所)
  • 第8章:EU・英国におけるグリーン・ファイナンス戦略の動向とその特徴:吉田健一郎(日立総合計画研究所)

 

EUの政策は非常に複雑です.メディアで紹介される際には,1つの法律や政策が単独で取り上げられますが,EUではまず行動計画を立てた後に政策パッケージが作られ,個々の法案が順次作成・施行されます.個々の法案や政策は大きな行動計画の一部であり,それを理解しないとEUが何を進めようとしているのかがわからなくなります.

 

2019年に発足したフォンデアライエン欧州委員会はグリーンディールを主要政策の1つに位置付けました.2050年までに実質的なカーボンニュートラルを達成すること(欧州気候法),2035年までに1990年比で温室効果ガスを55%削減させる中間目標(Fit for 55),エネルギーの安定的な調達と再生可能エネルギーの拡大(RePowerEU)などの大きな政策があります.

 

ヨーロッパでは北海油田などのエネルギー源があるものの,人口に比してエネルギーの自給率が低く,域外からの輸入に頼っています.ロシアは重要なパートナーでしたが,近年の関係悪化を受けてロシアからの輸入は減少しています.特に,天然ガスはほぼゼロにまで減少しています.エネルギーの輸入元の多様化も必要で,イタリアは北アフリカからの天然ガスの輸入を増やしています.

化石燃料から再生可能エネルギー,そして,将来的には水素も含めたエネルギー転換が課題です.例えば,自動車分野では2035年に化石燃料車の新車販売がほぼ禁止されます.産業界はEUの政策に対応する必要があります.

 

エネルギー政策を実行するには資金が必要です.ヨーロッパは2010年以降,投資不足が課題となっています.投資を呼び込むための様々なEUの政策や環境関連の投資の最新動向も報告されています.

 

報告書の解説動画もあります.

 

 

第1章については,より詳しい解説動画があります.

 

 

EUの最新状況がわかる報告書,ぜひご覧ください.URLを再掲します.

『欧州グリーンディール戦略の現状と展望』ITI調査研究シリーズNo.153

 

本日はここまで.