ノルウェー(4) フッティルーテン

今日はノルウェー北部を巡る定期船,フッティルーテン(Hurtigruten)のお話です.世界で最も美しい船旅,とホームページで宣伝していますが,景色は確かに美しく,ベルゲン周辺のフィヨルド観光とは違った楽しみがあります.

 

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フッティの部分は早い,ルーテンの部分は定期航路を意味します.日本語の公式サイトでは,ノルウェー沿岸急行船と訳されています.その名の通り,ベルゲン(Bergen)からキルケネス(Kirkenes)までを12日間で毎日,定期便として往復しています.ノルウェーでは,ボーデー(Bodø)までしか電車がなく,そこから北への物流は,トラックや飛行機になります.しかし,大型の飛行機が発着できる飛行場がないため,船が重要な物流手段となります.

日本人から見るとフッティルーテンは観光船ですが,ノルウェーでは重要な貨物船で,その上の部分に客室があるという感じです.そのため,フッティルーテンは34の町に寄港します.ただ,荷物の積み下ろしだけで寄港時間が15分や30分というところもあちこちありますし,北行きと南行きで寄港地が若干変わります.北行きと南行きでは到着時刻が違うため,見られるスポットも異なります.例えば,北行きではトロムソ(Tromsø)に午前中到着しますが,南行きでは真夜中に到着します.

 

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フッティルーテンで立ち寄る町などの情報は,オスロ空港の本屋や船内で販売しているフッティルーテンの本に詳しく載っています.この本はおススメですが,重さが1450グラムもあります・・・

この本によると,フッティルーテンの前身は1838年にトロンハイム(Trondheim)とトロムソを結んだ蒸気船のようです.1893年にはトロンハイムからハンメルフェスト(Hammerfest)までカバーできるようになったそうです.

 

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この船はストックマルクネス(Stokmarknes)にあるフッティルーテン博物館で見ることができます.すでに引退した船で,中を見られます.この博物館の入り口でフッティルーテンの乗船カードを見せると入場料が割引になります.中はかなりレトロな感じです.全体の9日目(南行きでは3日目)に寄港しますが,この日はトロルフィヨルドにも立ち寄る,フッティルーテンのハイライトの日です.

 

予約は日本語サイトでも英語サイトでもOKです.使い勝手は一長一短で,説明は日本語で見て,予約は英語のサイトの方がいいように思います.英語のサイトでは,Port to portというプランが紹介されており,途中で乗ったり途中で降りたりできますが,メールでやり取りする形になっていて,ちょっとハードルが高いです.

 

フッティルーテンの旅で最も重要なのが船選びです! 船によって選べる部屋のグレードは異なります.フッティルーテンに乗る予定がある場合は,まず船を予約してから全体の旅程を設定した方がいいでしょう.

フッティルーテンは客船ですが,豪華客船ではありません.それは,寄港地の港の大きさのためで,大きい船でも全長が130メートルほどしかありません.古い船にはそもそも高いグレードの部屋がなく,日本語ホームページでも古い船はマニア向けとされています.

 

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こちらはヴェステローレン号(MS Vesteråten)の中.軽食を取る場所です.エレベーターもありますが,階段で移動した方が早いかもしれません.階段など木製が多く,確かにレトロ感はあります.

 

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こちらはトロルフィヨルド号(MS Trollfjord)の食堂.食事は1日3回で(非常に安いプランは食事がないので軽食などを購入します),通常は夕食が指定席,朝食と昼食は自由席です.スイートは隣のレストランを使うことができ,その他の人は夕食を別料金でアップグレードしてレストランに行くこともできます.レストランの食事は食堂よりもいい感じですが,食堂でも十分です.食堂の夕食は各地の伝統料理で,料理の説明の紙が付いてきます.

こちらの船はエレベーターも2基あって外が見えるタイプで,8階のラウンジも綺麗です.今回はトロルフィヨルド号に乗りましたので,この船を前提にお話します.

 

部屋のグレードは,窓がないポーラーインサイド(D,I),丸窓のポーラーアウトサイド(A,J,L,N,O),大きな丸窓で上層階のアークティックスーペリアー(P,U,QJ),エクスペディションスイート(Q,M,MG,MX)があります.部屋の安い方から高い方へと並んでいます.安さ重視でもせめてポーラーアウトサイドのNクラスくらいから,通常はアークティックスーペリアーを取るべきだと思います.

 

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この部屋は,アークティックスーペリアーUクラスです.今回このクラスにしました.部屋は狭めですが,とりあえずは生活に支障がありません.シャワーとトイレもついています.また,テレビもついています.このテレビでは,船の前方カメラのライブ映像や飛行機のような今どこにいるのか地図を見せてくれるチャンネルがあり,かなり便利です.

 

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こちらはスイートMGクラスです.ちょっとだけ中を見せてもらいました.外もよく見えて,快適そうです.バスローブがありますが,持ち帰ってもいいそうです.スイートははっきり言って高いですが,運が良ければ少し安くすることもできます.それは,アークティックスーペリアーで予約をしておいて乗船し,乗船日にスイートに空きがあれば現地で割引料金でアップグレードするというものです.必ずスイートで,という人にはおススメできませんが,どちらか悩んでいる人にはいい作戦だと思います.

 

部屋の場所も大事です.トロルフィヨルド号では3,4,6,7,8階に部屋がありますが,6階は部屋の外にはぐるりと通路があり,外から中が丸見えです.ホームページのデッキプランを見ると,6階は部屋番号の外側にちょっとスペースがあります.これが通路を表していて,他の船でも外から丸見えの階があります.高いグレードでも丸見えだったり柱や救助船で外が見えなかったりする場合がありますので,部屋選びも重要です.トロルフィヨルド号では7階か8階がいいと思います.

 

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クルーズの半分以上は北極圏を通行します.夏は日が長く,冬はあまり日が昇りません(おそらくかなり寒いと思います).月が出ていないなど条件が合えば夏でもオーロラを見ることができるそうです.夏なら夜に9階のジャグジーに入りながら夜空を見ることができます.夜中はジャグジーも人が少ないです.

 

日本語のページでは,「船は揺れますか」の質問にきちんと答えていないような気がしますが,船に慣れているかどうかで答えは変わります.私は乗り物が苦手なので,初日から苦戦しました.そこで,売店で「Sea band」というリストバンドを買って乗り切りました.2000円位で日本でも売っています.これを付けても酔いはゼロにはなりませんが,かなり軽減されます.今回はクルーによると毎日天気が穏やかで全然揺れていない,とのことでした.他の乗客は別に困っていないようでしたが,2日目と11日目(南行き5日目)には,外海に出る時間帯もあり,この時間帯は縦揺れと横揺れが来ます.

 

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船でゆっくりするのもいいですが,フッティルーテンには様々なエクスカーションがあります.北行きと南行き,季節によっても選べるエクスカーションは異なります.冬だとスノーモービルや犬ぞりなどもあります.事前にネットで予約することもできますし,空きがあれば船内でも予約できます.バスで移動しながらあちこち見学して次の寄港地に先回りするものもありますし,寄稿時間が長いときは市内観光もあります.外から船を見るのもいいですね.

 

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ハンメルフェストの町の様子.写真の奥の方には石油施設があります.ノルウェーはヨーロッパ最大の産油国であり,天然ガスも輸出しています.ハンメルフェストは近年人口が増加しており,温暖化によって北極圏の町々の開発が進んでいます.普通のクルーズよりも寄港地が多いのもフッティルーテンの特徴です.

 

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美しい景色がずっと楽しめます.豪華客船のようにショーはありませんが,クルーによるプレゼンテーションやエビ食べ放題などのイベントがいくつかあります.毎日の予定は8階で配布しているスケジュール用紙に書かれており,次の日の予定を立てられます.また,船内放送も頻繁にあります.用紙を集めておくと,後で何日に何があったか振り返ることができます.

 

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トロルフィヨルド.船の名前と同じ場所です.船ではフィヨルドの一番奥まで行って,ここでくるりと回ってコースに戻ります.天候が悪い日や遅れが出ている日はカットされるみたいです.左右には切り立った岩山があり,標高は1000メートル.長さ2.5km,幅は100メートルというフィヨルドは迫力があります.ノルウェーのお土産にもなっているトロールは,昼間は岩になっていて夜になると動き出すそうです.

 

北から南に行くにつれて,少しずつ変わっていく自然を見ることができます.自然だけでなく多くの町を見ることもできる,少し変わったノルウェーの旅もいいのではないかと思います.

 

本日はここまで.