ノルウェー(1) ノルウェーへのアクセス

今日からはノルウェーのお話です.まずは,ノルウェーでの移動についてお話します.

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日本からノルウェーへの直行便はなく,乗り継ぎになります.フィンランドのヘルシンキやデンマークのコペンハーゲンが便利です.時間が短くてちょっと怖いですが,コペンハーゲンからだと45分で乗り継げる便もあります.

ノルウェーに入るときには,たいていの場合はオスロ(Oslo)のガーデモン空港(OSL)を使うのではないかと思いますが,経由便ですのでベルゲン(Bergen)などに直接入ることもできます.ノルウェーは南北に長~い国で,多くの観光地が沿岸部にあります.上の写真はトロムソ(Tromsø)ですが,電車で行くことはできません.車も大変です.オスロ(Oslo)からトロムソまでは1642km,南東部のスタヴァンゲル(Stavanger)からキルケネス(Kirkenes)までは2726kmあります.他のヨーロッパ諸国のようにのんびりドライブで1周というのはなかなか大変です.

ただし,ノルウェーの(本当の)自然と歴史を見るのであれば車は必要です.いわゆる観光ガイドに載っている町から離れているところばかりです.いろいろ巡るには日数も必要ですので,かなり上級者向けだといえます.

 

ベルゲンからスタヴァンゲルは地図で見ると簡単に行けるような気がしますが,電車で行こうとするとオスロの近くを経由して半島をぐるっと回る必要があり,全く実用的ではありません.車では212kmの距離ですので,バスかフェリーでの移動が現実的です.

 

ということで,ノルウェー国内で最も便利な移動手段は飛行機ということになります.非常に物価の高いノルウェーの中では飛行機チケットは比較的安く,観光客にも便利です.

 

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ノルウェーの国内便では,SAS(スカンジナビア航空),ウィデロー(Widerøe),ノルウェイアン(Norwegian)が利用できます.オスロからだとほとんどの場所に1-2時間で移動でき,費用も100-300ユーロくらいです.オスロからトロムソまでは1時間50分,オスロからキルケネスまでは2時間5分です.

ノルウェーの北部地域は電車がない代わりに飛行機がバスのようにいくつもの町を経由します.トロムソからキルケネスまでは写真のウィデローの直行便の他,いくつかの町を経由してキルケネスに到着する便もあります.ウィデローとノルウェイアンでは2週間乗り放題切符も販売しています(ウィデローで500ユーロ).

ノルウェーでの飛行機には注意点もあります.それは預け荷物の重さです.担当者の差もあるとは思いますが,23kgの制限にかなりうるさいです.他の場所なら数kgオーバーしてもヘビーシールを貼られるだけですが,ノルウェーではビジネスクラスも関係なく受け付けを拒否することがあります.荷物を2つに分けるとOKになるので,飛行機に載せる重さは変わらないのに意味の分からない規制です.後でも書きますが,ノルウェーを旅すると本当にイライラします.

 

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ノルウェーではフェリーもよく利用されます.写真はベルゲンからキルケネスまでを往復しているフッティルーテン(Hurtigruten)です.ノルウェー北部のクルーズ船で,片道5泊6日間,往復だと12日間でノルウェーの東海岸を堪能できます.途中にいくつものエクスカーションがありますので,クルーズだけでなくアクティビティも楽しめます.

 

ベルゲンからはソグネフィヨルドをはじめとするフィヨルドツアーがあり,船で移動します.また,デンマークのヒルツシャルス(Hirtshals:スケーエンの近くの町で大きな水族館がある)からのフェリーもあります.

 

電車は比較的使いやすいですが,かなり時間がかかります.ベルゲンからオスロまでの電車はベルゲン急行といわれていますが,400kmほどの距離を移動するのに7時間もかかります.まさにベルゲン鈍行です.ベルゲン駅では車体トラブルで出発が遅れたのですが,説明のアナウンスもなく代替手段があるのかないのかも不明確なままで乗客が1時間以上ホームで待たされました.しかも,車体トラブルを解消せずに出発し,トラブルのあった車両を封鎖してのスタートだったため,指定席を取っていた人々が食堂車に追いやられるというおまけつきです.こういう点でもイライラさせられます.

 

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ベルゲン鈍行より1枚.車窓からは時々素晴らしい景色が見えます.このような景色のほとんどはベルゲンとミュルダール(Myrdal)の間で見られます.オスロからフロム(Flåm)まで電車で行くと時間がかかる割にはあまり景色は良くないということになります.

 

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写真はオスロ空港の掲示板です.F1とF2は特別料金がかかる電車で,通常の電車とは切符が異なります.「OsloS」を経由する電車は頻繁にありますので,普通の電車でも問題なく,到着時間に大きな差があるわけでもありません.

 

その他の移動手段としてはバスがあります.オスロ郊外など道がいいところのバスは他の国と変わりなく快適ですが,さらに郊外に行くと大変かもしれません.例えば,ロフォーテン諸島などは道が狭くて曲がりくねっていますが,バスはどんどん進んでいきます.乗り物酔いしやすい人にとってはかなりつらいです.

その他には,都市間の移動ではありませんが,冬になると犬ぞりやスノーモービルなどもあります.ノルウェーの北部地方は北極圏に入るため,オーロラも見ることができます.夜が長い冬が見どころですが,新月に近いなど条件が合えば夏でも見ることができるそうです.

 

 

ノルウェーの印象は「全く行き届かない」です.人々はにこやかで観光業に携わっている人々も悪い人たちではありません.しかし,顧客目線で生産性やサービスを改善する,という視点が抜けているように思えます.一生懸命頑張っているようなのですが,全く気が利かず,基準に達していない,という印象です.簡単に改善できそうなことができておらず,イライラさせられます.

その理由として考えられるのか,「オランダ病」です.資源国では資源を掘るだけで収入が得られるために,生産性の改善が進まないことを表しています.ノルウェー統計局が公表している「This is Norway 2018」を少し見てみましょう.

 

ノルウェーの労働者のうち最も多いのは30%を占める公務員で,鉱業に直接従事する人は多くありません.石油化学などの雇用は増えつつありますが,製造業や建設業に比べるとはるかに少ないです.しかし,収入(月収,2017年)を見ると,男性では金融業が7万5000クローナ(NOK,約105万円)と最も高いですが,鉱業も7万1000クローナ(約99万4000円)と2番目に高くなっています.ICTの6万1000クローナ(約85万4000円),公務員の5万1000クローナ(71万4000円)よりもはるかに高い水準です.女性では鉱業が最も高く7万クローナ(約98万円)です.ちなみに,全産業の平均は男性で4万7410クローナ(約66万4000円),女性で4万0860クローナ(約57万2000円)です.1クローナ14円で計算しています.物価の高いノルウェーですので給与水準自体が高いですが,その中でも公務員や鉱業がかなり高いことが分かります.

 

公務員や鉱業では生産性の改善は大きくなく,サービス業などに比べて個々人の工夫も求められません.国全体のまったりとした雰囲気の原因ではないかと思います.ちなみに「This is Norway 2018」はグラフが多く読みやすいです.

ノルウェーからはスウェーデンなど外国に簡単に行けるにもかかわらず,ノルウェー人の観光の約75%は国内旅行で自国と外国を比べる機会が多くありません.

 

ノルウェーは確かに自然が美しい国で,南と北で景色の違いを楽しむこともできます.現代的なサービス水準を期待せずにまったりする気持ちが必要なのかもしれません・・・

 

本日はここまで.