ノルウェー(3) キルケネス

今日はノルウェーの北部,ロシアの国境に近くのキルケネス(Kirkenes)のお話です.

 

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キルケネスは現地の発音が少し難しいです.「シルケネス」といっているように聞こえますが,英語風にキルケネスと発音してもきちんと通じ,問題ありません.

キルケネスに行くための主な交通手段は飛行機です.電車はありません.長距離バスもあると思いますが,オスロやトロムソからなら飛行機になります(オスロからキルケネスまで車で約2400km).トロムソからキルケネスまではウィデロー航空があります.トロムソへの直行便とハンメルフェスト(Hammerfest)などのいくつかの町を経由してトロムソまで飛ぶ便があります.切符はWebページから簡単に購入できます.

  

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キルケネスは小さな町で,飛行機は1日1~数便です.空港についたらすぐに荷物を受け取って,写真のバスに乗りましょう.車体は青のこともあります.このバスはフッティルーテンのターミナルにも行きます.バスは飛行機の時間に合わせてくるので,このバスを逃すと最悪の場合,次の日までバスが来ません.空港からキルケネスの町中までは13kmほどあります.大きな荷物を抱えて歩くのは難しいでしょう.バスにはVardø行きもあります.Vardø行きはキルケネスの町を通りません.間違えないようにしましょう.

空港から町までタクシーで行くと400クローネ(約5600円)くらいかかります.タクシーは空港で客待ちをしていないので,電話で呼ぶ必要があり,町から空港までの呼び出し料金が含まれます.

 

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キルケネスの地図.左上の黒丸が集まっているところが中心部で,歩いて10分ほどで回れる広さです.中心部にはホテルやレストラン,ショッピングモールがありますが,博物館のようなスポットはありません.博物館は左下の半分だけ写っている湖の所にあります.キルケネス市内には巡回バスもありますが,バスの本数が多くないのでちょっと不便です.他の町など遠くに行くのでなければ徒歩で十分です.

フッティルーテンの乗り場は黒丸の19番(右上)です.町中から歩いて行ける距離(1kmちょっと)ですが,大きな荷物を持っていくのは大変なのでバスを使うことになります.

 

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キルケネスにはいくつか宿泊施設がありますが,まともなホテルはトーンホテル(Thon Hotel Kirkenes)とスカンディック(Scandic Kirkenes)だけです.どちらもノルウェー全土に展開しているホテルチェーンで,スカンディックは町の中心部,トーンホテルは海沿いに建っています.個人的にはトーンホテルの海側の部屋(Seaview)がおススメです.部屋からフィヨルド(Bøkfjorden)の眺めが楽しめます.

 

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キルケネスの中心部.キルケネスの人口は約3500人ということで,中心部もこれくらいの大きさになります.小さなスーパー,アジアショップと屋台,スカンディックホテルがあるくらいです.ちなみに,アジアショップには不思議な食べ物がたくさんあります.屋台はまあまあ美味しいです.

キルケネスでの観光スポットは後で紹介する博物館と地下壕のみで,ゆっくりしながら船を待つところです.アクティビティはいくつかあり,ロシア国境を見に行くもの,タラバガニの収穫体験,シベリアンハスキーに会いに行く(夏だとハイキング,冬だと犬ぞり)などがあります.タラバガニは小さな船で沖に行き,すでに仕掛けられているカゴを引き上げてタラバガニをつかんで採るというもので,そのカニは後で食べられるようです.私はアクティビティではなくホテルのレストランで食べましたが,いけすから取り上げられたタラバガニは逃げ足が速く,かなり抵抗します.意外と楽しいのかもしれません.

 

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南ヴァランゲル博物館(Sør-Varanger).ヴァランゲルはこの近くのフィヨルドの名前で,キルケネスからフッティルーテンで出発するとまず初めに左手に見えてきます.キルケネスやVardø,Vasdøあたりの地域もヴァランゲルと呼ばれています.2009年以降は,国境博物館(Grenselandmuseet)という名前でも呼ばれています.先ほどの地図では切れていて載っていませんが,左下の湖の湖岸(地図では右側)にあります.中心部からは歩いて20-30分ほどです.

中はヴァランゲル地方の民族博物館になっています.20世紀初頭のキルケネスの写真や伝統的な生活スタイル,鉄鉱石の採掘の様子などが展示されています.鉄鉱石は現在でも掘っているようで,町の西側に鉱山と工場のようなものが見えます(地図の左端部分).この地域は第二次大戦の空爆被害も受けており,戦争関連の展示(爆撃機やそれから逃げる人々)もあります.20世紀後半の展示もあり,古いPC(アップル?)や携帯電話なども展示されています.

 

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展示のそばに説明がないので,事情を知らない人はなぜ自転車があるのかわからないと思います.『ヨーロッパ経済とユーロ』第9章第3節「難民問題」では,2015年冬に難民がロシア経由でノルウェーを目指し,Stroskogの国境検査所を自転車で通過したことを紹介しています.当時は徒歩での国境通過には厳しい審査があったものの,車両での通行は比較的自由だったため,軽車両の自転車とともにノルウェー入国を果たした難民が数千人に上りました.その後,自転車での国境通過は禁止になりましたが,ロシアでの自転車不足などの問題が生じました.キルケネス辺りで自転車を捨てた難民も多くいたのかも知れません.

 

博物館の近くにもショッピングモールがあります.ちなみに,ノルウェーのショッピングモールは基本的には小規模です.日本のショッピングモールを想像するとがっかりすると思いますが,変わった,そして比較的安価なお土産探しにはいいと思います.

 

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カニ漁船の基地.トーンホテルから海沿いに東に少し歩いたところにあります.カニのカゴがたくさん積まれています.ディスカバリーチャンネルの「ベーリング海の一攫千金」という番組を思い起こさせます.私が食べたタラバガニは2.5kgほどでしたが,かなり大きく感じました(写真はノルウェー(2) ノルウェーでの食事と買い物 - 欧州徒然草).10kg以上の大物も取れるそうですが,食べるのは大変そうですね・・・ ノルウェーの人たちには焼きタラバのおいしさも伝えたいです.茹でガニはちょっと茹ですぎです.

 

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フッティルーテンターミナル.上の方の地図の黒丸19番にあります.フッティルーテンはベルゲンとキルケネスを結ぶ定期航路線で,ほぼ毎日運航しています.キルケネス経済を支える重要な船です.キルケネスには数時間停泊しています.船への出入りにはバーコードのついたカードが必要なのですが,入り口で観光したいといえば「port pass」を発行してくれるのではないかと思います.

ターミナルの近くにはスーパーがいくつかあり,ホームセンターもあります.町の中心部からは徒歩で10分ほどですので,時間が余ったらスーパー巡りで時間を潰すのはどうでしょうか?

 

キルケネスにはツーリストインフォメーションもありません.キルケネスではフィヨルドを眺めつつのんびりするというのが一番です.アルタ(Alta)という町の博物館の広告もありますが,300km離れていますので,簡単には行けません.北緯70度近くになりますが,8月末でもあまり寒くないと感じました(最高気温は15-20度くらい).同じ季節でもトロムソの方が寒かった印象です(最高気温は10-20度くらい).バレンツ海の湾の奥まったところにあるからかもしれません.逆に冬はかなり寒いのではないかと思います.「北」を体験したい人にはいいところだと思います.

 

本日はここまで.