前回のお話に引き続き,ヨーロッパへの観光のお話です.EUは7月1日から,下の表の15カ国からの流入を認めました.しかし,ヨーロッパ旅行が自由にできるわけではありません.
出所:閣僚理事会ホームページ
*中国は相互に措置が緩和されるという条件付き
◆あくまでもEUとしての勧告
今回の記事は,閣僚理事会の6月30日に付けのニュースをもとにしています.
EUは,規則(Regulation),決定(Decision),指令(Directive),勧告(Recommendation),意見(Opinion)という5種類の二次法を策定します.このうち,規則,決定,指令には法的拘束力があり,加盟国は従う義務があり,移行期間中のイギリスにも適用されます.
規則と決定はEUの制定した法案がそのまま27カ国の加盟国にも法律として効力を持ちます.経済分野などでは指令も多く制定されますが,こちらは加盟国が指令の内容さえ満たせば上乗せで規制などを加えることができます.例えば,EUの労働時間指令では年に20日間の有給休暇が定められていますが,20日を超える有給休暇を設定している加盟国もあります.
勧告と意見は二次法ではあるものの,加盟国に対して法的な拘束力がないため,7月1日からEU圏内への旅行が自由になるわけではありません.例えば,ドイツは,日本がドイツからの入国制限を撤廃すれば,日本人のドイツへの入国を認めるようです.(ドイツニュースダイジェストにもニュース記事があります. 日本側も撤廃なら解除=ドイツへの入国制限 - ドイツ生活情報満載!ドイツニュースダイジェスト )
日本から観光できるかどうかの情報は,EUの「Re-open EU」というサイトで確認することができます.まずは,調べたい国を選択して「Go」をクリックします.ここではオーストリアを選んでみます.
詳細な情報が出てきます.ほとんどの国では右側に緑で「YES」とでますが,これはEU市民(EU27カ国+イギリス+EEA3カ国)は入国できるという意味です.日本人は第三国になりますので,地球のマークをクリックします.
そうすると,赤で「NO」と表示が出て,日本からの入国はできないことが分かります.オーストリアでは7月1日時点では日本から観光に出かけることができません.地図の縮尺を変えると,7月1日または2日時点では,ほとんどの国に行けないことが分かります.
ドイツはオレンジになっていますが,日本がドイツ人の入国制限を撤廃することが条件となっていますので,現段階では入国できないことになります.こうしてみると,確かにEUは7月1日から,域外からの入国ができるように勧告してますが,実際には7月上旬にヨーロッパ旅行するのはかなり難しいことが分かります.
EUは今後は2週間ごとに入国制限を緩和する対象国を見直すとしています.過去2週間で人口10万人当たりの感染者数がEU平均を下回っていること,新規感染者数が安定または減少していること,検査や感染者の追跡などの総合的な対策が十分に行われていること,という3つの条件を満たした国が対象になります.日本が3番目の条件を本当に満たしているのか少し気になりますが,日本の感染者数が増加すれば再び入国制限が課される可能性があるということです.これは旅行の計画に際して大きなリスクとなります.
しかもこれはあくまでもEUの勧告であるため,複数の国を旅行する場合は,旅行先全ての国の状況を確認する必要があります.
◆帰国時にも注意点が
7月1日現在の情報では,旅行が終わって日本に帰国した時点でウイルス検査を受ける必要があります.検査の結果が出るまでには1-2日かかるようです.検査結果が出るまでは自己隔離が必要になりますが,検査の結果が陰性であっても帰国後14日間は自己隔離をする必要があるようです.自宅待機をするためには,自宅までの帰路や自己隔離中に公共交通機関を使わないことなどが条件となります.
詳しくは厚生労働省の資料をご覧ください.
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000645427.pdf
ヨーロッパへの旅行は時間をかけて計画を練る人が多いと思います.現時点では問題がなくても,旅行直前に情勢が変わってヨーロッパ到着時に隔離されたり,日本に戻ってきてからさらに隔離されるということもありえます.
◆追跡アプリ
日本でも追跡アプリが話題になっていますが,EUでも5月13日の「旅行と輸送に関する政策パッケージ」の中で追跡アプリが出てきます.現時点では,アプリのインストールは自主的な判断に任されています.本来はEUベースのアプリを作成する必要がありますが,現在のところは各国が独自にアプリを作っており,機能,使い勝手,実効性,個人情報の扱いの面で様々な議論があるようです.
今後は国境を越えて人々が移動するようになるため,アプリの互換性やデータの共有などが課題になるでしょう.また,国内でもすべての人がアプリを使えるとは限りません.ヨーロッパでも地方に行くと通信環境の悪いところもありますし,移民や低所得者の中にはスマートフォンを持てない人もいます.自主的ベースでアプリを展開している理由の一つでもあるでしょう.
今後,観光客が増えるにつれて,EU域外の第三国からの観光客にアプリのインストールを強制すべきかどうかが議論になるでしょう.現在のところは自主的ベースになるでしょうが,EU域外での感染者や死亡者が大幅に増加すれば,空港などでのアプリのインストールを求められるようになるかもしれません.
◆今夏の見送りがおススメ
前回も今夏の観光は見送りがおススメだとしましたが,今でもやはり見送りがおススメです.感染者が減少すれば8月には観光に行ける国が増えるのではないかと思いますが,ホテルやレストランだけでなく博物館などでも人数制限や休館が続いているかもしれません.しかも,2週間ごとに状況が変わるため,予約時には問題がなくても旅行の時点では規制されるかもしれません.非常に不確実な状況で計画を立てるのは大変です.
今年の冬には通常に近づけばいいと思いますが,現時点では予想が立ちません.せっかくヨーロッパまで観光に行くのであれば,十分に楽しめることが分かるまで待つ方がいいのではないでしょうか.
最後のリストは欧州文化都市です.2020年にはゴールウェイとリエカが選ばれています.ゴールウェイはアイルランド西部の中心的な都市ですが落ち着いた雰囲気で,イニシュモア島などへのアクセスも便利です.アイルランドは左側通行なので,日本人も比較的簡単に運転できます.リエカはそばを通ったことしかありませんが,ザグレブからだけでなく,スロベニアのリュブリャナからもレンタカーなどでアクセスできます.リエカは港湾都市ですが,高速道路からも街並みや港が見えます.
本日はここまで.