リトアニア(2) − ヴィリニュス旧市街の教会たち

今日はリトアニアの首都,ヴィリニュス(Vilnius)の町並みです.ヴィリニュスは1323年に首都となって以降,リトアニアの中心地として発展してきました.遷都については1つの物語があります.

当時の支配者である,ゲディミナス大公がヴィリニュスがある地域に狩りにやってきました.ここで道に迷ってしまい,野宿をすることにしました.その夜,100頭の鉄のオオカミが唸り声をあげる夢を見ました.この夢には何か意味があるに違いないと思った大公は占い師のリズデイカに夢解釈をさせたところ,夢を見た地に町を作るべきだと進言しました.この新しい町は鉄のオオカミのように強固で,オオカミの唸り声のように町の名前は世界にとどろくであろう,と.そこで,大公はここに町を作ることにしたそうです.

その後,ヴィリニュスはハンザ同盟にも加盟せず,独自の発展を遂げてきました.そのためか,町並みは他の2国の首都とはかなり異なっています.ヨーロッパの影響よりもロシア影響を強く受けています.ちょっと田舎っぽい感じもしますが,それが魅力だともいえます.

ヴィリニュス旧市街の観光は徒歩になります.町中には,バスやトロリーバスがありますが,トロリーバスは旧市街への乗り入れがなく,バスは路線図がなかなか手に入らず使いにくいです.バルト3国の首都の観光は徒歩が中心となります.1日に何キロでも歩ける恰好と覚悟が必要です.

ヴィリニュス旧市街の見どころの多くは教会です.ガイドブックによると旧市街の徒歩圏内だけでも17の教会や聖堂があります.これに少し離れた所にある聖ペテロ・パウロ教会を加えると18です.逆に言うと,それ以外の見どころは少ないともいえます.ヴィリニュスの旧市街には歴史的な建物がたくさん残っていますので,それらを眺めながら散策するのもいい方法です.今日はいくつかの教会を紹介します.


まずは夜明けの門(Aušros Vartei:英語表記では,Gate of Dawn)とテレサ教会(Šv. Teresės Bažnyčia)です.夜明けの門の3文字目は「s」の上にカタカナの「ヘ」を逆さにしたような記号がついています.場合によっては文字化けしているかもしれません.テレサ教会の方にも同様の文字があります.駅(Stotis)からは歩いて10分もかかりません.バジリヨヌ通り(Bazilijonų)にあります.この通りには明日紹介するマーケットもあります.

夜明けの門には礼拝所があり,ここの聖母マリアのイコンは大変な信仰を集めています.17世紀の後半にはすでに奇跡を起こすとして崇められていたそうです.この絵は外からも見ることができ,この写真にも少し映っています.この礼拝堂に行くには,写真の左手にあるテレサ教会から上がって行きます.私が訪れた時はお祈りの時間で,多くの信者が集まっていましたので遠くから少しだけ見ました.このイコンは1993年に修復されて現在のそうな形になったそうで,金色の服の装飾の中,顔の部分と手が写実的な絵画で表現されています.リトアニアのお土産物屋にはこのイコンが必ずと言っていいほど売られています.

この通りには,いろいろな店があり,少し進んだ右側には聖カジミエル教会(Šv. Kazimiero Bažnyčia)もあります.ピンク色の建物です.その先には旧市庁舎(Rotuse)と広場があり,ツーリストインフォメーションもあります.


大聖堂(Arkikatedra Bazilika).ヴィリニュスを代表する建物です.この大聖堂は歴史が古く,1251年くらいまではさかのぼれるそうです.聖堂内には11ものチャペルがあり,この中でも聖カジミエルのチャペルには,3本の腕を持つ聖人の絵があることで知られています.この絵を描いた画家が,3本目の腕を消そうと上から絵具を塗ってもしばらくするとまた腕が見えてきたそうです.3回同じことを繰り返した後,これは奇跡だと考えた画家は,腕を塗りつぶすのを止めたそうです.

大聖堂の広場にある像は,ヴィリニュスを定めたゲディミナス大公だそうです.また,同じく広場にある鐘楼は高さが57メートルもあり,これも歴史がかなり古いとのことです.この広場には,願いがかなうという石のタイルがあり,その周りを回りながら願い事を言うそうです.探すのをすっかり忘れていたので,どこにあるのか分かりません.皆さん探してみてください.


聖ペテロ・パウロ教会(Šv. Petro ir Povilo Bažnyčia).ここは旧市街から少し離れた所にあります.大聖堂の北にはネリス川(Neris)が流れていますが,大聖堂から川に出て川を渡らずに,大きな道(コシュウシコス通り:Kosciuškos)を右に行くとあります.歩くと10−15分の距離で,橋のたもとから2−4,14,17のトロリーバスでは2駅です.教会の前には大きなロータリーがあります.


この教会の中の装飾は群を抜いています.教会の建築には8年,内部の装飾には33年かかっています.内部には2000以上の漆喰彫刻があり,教会の中に白い光が満ちています.ちなみに,ここでは撮影は自由にできます.フラッシュやビデオもOKです.それだけでなく,右前にある機会に5リタのコインを入れると5分間内部の照明が明るくなり,撮影がしやすくなります.これは観光客用の仕掛けで,5リタのコインがない時は売店で両替してくれます.


教会内の白に合わせて,パイプオルガンも白に塗られています.旧市街からは少し歩きますが,ここはぜひ見てほしい所です.


聖アンナ教会(Šv. Onos Bažnyčia)とベルナルディン会教会(Bernardinų Bažnyčia).ナポレオンが持って帰りたいといったという逸話のあるアンナ教会は左側の茶色の建物で,その奥がベルナルディン教会です.私が行ったときには,アンナ教会は夜まで閉まっていたため,隣のベルナルディン教会に行きました.真ん中の門を入った奥にあります.この辺は旧市街の東の端にあたります.この南側にはウジュピス地区(Užupis)があります.

その他にもたくさんの教会があります.ただ,前述のようにヴィリニュスには熱心な信者がたくさんいて,教会の中を自由に見られない時間帯も結構ありますので注意しましょう.服装や中で騒がないなどの配慮も必要です.私は建築の知識はないのですが,様々な様式の建物や装飾があり,その面でも楽しめそうですね.

明日は,その他の見どころを紹介します.

本日はここまで.

追記(2016年):バルト諸国の通貨はすべてユーロになっています.クレジットカードは多くの場所で使えますが,古いサイン式のカードは使えません.ICチップ付きのクレジットカードは必須です.バルト諸国の新しい観光情報は,「おさんぽわんこの旅の思ひで…ヨーロッパ編」がとても詳しいので,ぜひご覧ください.