ラーブを倒せ

今日はテレビ番組のお話です.

ゲストハウスでは,英語のチャンネルはCNNしか映らないので,ドイツ語が分からなくても楽しめる番組を探しています.その中で見つけたのが,「ラーブを倒せ(Schlag den RAAB)」という番組です.

公式ページはこちら,ビデオが見られます.

この番組は,シュテファン・ラーブ(Stefan Raab)という芸能人と賞金を懸けて様々なゲームをするという番組です.このゲームが実にくだらないのが面白いのです.番組は現在は年に6回放送されているようで,私も10月末の回までに3回見ました.ということは,全部見てますね.

まず,挑戦者が選ばれます.公募から選ばれた(と思います)5人がそれぞれ自分をアピールします.視聴者がそのうち1人を電話投票で選びます.この番組は生放送で,約10分くらいの間に5人の内から挑戦者が1人選ばれます.選ばれなかった4人はその場でサヨナラです.この挑戦者が15回戦のゲームでシュテファン(ラーブ)と戦います.

ゲームは,テニスや卓球,クイズなど普通のものもあるのですが,くだらないゲームが多くて面白いです.例えば,10月の最新版では,生クリームを泡立てる,というのがありました.ビーカーに入った生クリームを泡立てて,先に固くなった方が勝ちです.ビーカーをひっくり返して落ちてこなければ合格です.この模様は,公式HPのビデオにもあります.また,トイレのスッポンを投げてガラスにくっつけるというゲームもありました.前回の最終決戦は,テーブルの上においたコインを指ではじいて,グラスの中に入れるというものでした.本当にくだらないのですが,賞金50万ユーロがかかっているので,当人は真剣です.ここが面白いですね.

ゲームは得点方式になっていて,1回戦は1点,2回戦は2点で最後の15回戦は15点入り,合計点で争います.つまり,初めの数ゲームは全敗でも最後の数ゲームを連続して取ると勝利できるわけで,最後の方まで勝負の行方は分かりません.

挑戦者はいろいろな職業から選ばれており,前回は大学の先生が出ていました.スポーツはともかくクイズでシュテファンにぜんぜん勝てず,13回戦で勝負がつき,20対71という大差で破れました.シュテファンの人気が高いためか,番組は挑戦者にとっては完全なアウエーで,挑戦者がゲームに勝っても拍手はまばら,シュテファンがポイントを取るとオリンピックで金メダルでも取ったかのような割れんばかりの拍手です.また,生放送で挑戦者が上がってしまっているのか,簡単なゲームでもミスを連発して自滅することも多いです.

例えば,2人がそれぞれ0本から3本までのマッチ棒を手に握ってテーブルの上に差し出し,合計の本数を当てっこするというゲームがありました.もちろん,握っているマッチ棒は当てっこが終わるまで分かりませんが,自分が何本握っているかで答えは絞られます.日本でも,ジャンケンのグーの状態から,みんなが同時に親指を0−2本立てて,合計の数を当てるというゲームがありますよね.それと同じ方式ですが,マッチ棒の場合は答えを言うまで考える時間があります.また,交互に本数を言うルールなので,後から言う方が情報が多くて当てやすくなります.ところが,このゲームをした2人はそんなことは考えなかったようです.


あるとき,挑戦者は0本握っていました.そうすると,自分がゼロなので合計の本数は0−3本のはずですが,挑戦者は4本と答えていました.意味が分かりません.シュテファンもこのようなミスをしたのですが,挑戦者はこのミスを何度も繰り返して負けてしまいました.問題は,自分が意味のない答えをしているということに気づいていないということです.この人はIQが147もあるというのが自己PRだったのですが,ドイツのIQはどうやって測るんでしょうか? もしかしたら私のIQがドイツ方式では180くらいあるんでしょうか?

そういえば,この人はクイズも全然ダメでした.この番組のクイズは,たいてい7点先取で勝つのですが,回答を間違えると相手に点が入ります.シュテファンはほとんどの問題で答えず,相手がどんどん自滅した所で1−2問答えて勝つというパターンが多いです.分からない問題は答える必要がないのに,どんどん答えを間違って自滅します.このIQ147は,スポーツでほぼ全勝して最終的に50万ユーロを獲得しました.えー,という感じです.ちなみに,この人が最終的に勝利した時にも拍手はまばらでした.

このように,突っ込みどころが満載で楽しめます.番組は夜の8時15分から始まりますが,終わるのは12時過ぎです.これまでの最長記録は1時34分だそうです.これだけの時間,2人のゲームで時間をつないで,15%前後の視聴率を稼いでいるのはすごいです.ドイツは日本よりもチャンネル数が多いので(ゲストハウスは地上波しか映りませんが,それでも16チャンネル映ります),15%は大きい数字だと思います.

この番組は2006年から放送されていますが,シュテファンは13勝6敗とずいぶん勝ち越しています.シュテファンが勝つと,賞金の50万ユーロはキャリーオーバーされます.どんどん賞金が溜まって行き,300万ユーロを手にした人もいます.その後,賞金は50万ユーロに戻ります.シュテファンが勝つと賞金が増額されてもしかしたら自分が挑戦者になるかもしれない,と思えば,挑戦者に冷たい反応をするのも分からなくはないですね.

シュテファンはもともとミュージシャンだったようですが,私にとっては,変な番組ばかりやっているおじさんです.この番組の他には,アイスホッケーのリンクの上でフットサルをやる「アイスフットボール(Eisfußball)」やサッカー場に作られたオフロードコースで車のレースをする「ストックカー・クラッシュチャレンジ(Stock Car Crash Challenge)」などがあります.

氷の上で普通の靴をはいてサッカーをするのもかなり笑えますが,この車のレースがすごいです.1周が300メートルもないくらいの土のコースの上を,10台の車が走ります.予選レースは1周走るごとに5点入り,誰かが20周したところで終了となり,決勝のグリッドが決まります.これは普通なのですが,決勝レースは10分間のレースで,1周すると5点,他の車を90度以上スピンさせると25点,ひっくり返すと50点がもらえ,何だかわけのわからないレースになります.コースも狭く,3台が横に並ぶのはちょっと無理です.壊れた車は,コンテナ用のリフトで持ち上げられてコース外に排除されます.これが排気量ごとに3クラスあって,シュテファンは一番上のクラスに出場します.シュテファンは1966年生まれということで43歳.よくやるなという感じです.前回は,F1ドライバーのエイドリアン・スーティルが出場し,かなりいい結果を出していました.彼の運転技術では,F1よりもこっちの方があっていますね.

このイベントの最後は,30台の車がいっせいに走るサバイバル戦です.壊れた車はどんどん排除されていき,最後に残った2台は正面衝突をさせて壊れなかった方が勝ちです.もう,アホだとしか言いようがないのですが,ぜひ日本でも放送してほしいです.ちなみに,イギリスやスペインなどでは,「ラーブを倒せ」のコピー番組を(ちゃんと許可を取って)放送しているそうです.

この面白い番組を,ぜひ日本でも見たいですね.古い回の再放送とかも面白いと思います.シュテファンの番組は,プロジーベン(Prosieben,Por7)というチャンネルで放送されます.ドイツに来ることがあったら,テレビの番組表もチェックしてみてください.

本日はここまで.